『アイカツフレンズ!』第17話「運命の出会いは月の導き」感想(メモ)

 白百合さくやのペンギンカフェでの挙動を見て「サブウェイとかスタバが苦手なタイプそう」と思った。自分はサブウェイもスタバも滅多に行かないので、完全にイメージで言っていますが……。ちなみに僕は遠い昔ドイツ旅行でケバブ食べることになった時に、野菜の単語が何もわからないので「alles(全部入れて?)」で乗り切ったことがあります。乗り切れていない。

 メニューを見ながら「えっと、その、どれも……」というさくやの性格は、一見優柔不断そうに見える。「どれも……」の先に続く言葉を聞きたかった。「どれもおいしそう」なのか?「どれもまずそう」なのか?(後者はさすがに無い。)

 もしここで「どれにしようかな?」という言葉をさくやが発したのであればどうか。その言葉は何かひとつを決めること前提の言葉だと思うけれど、主体的に何かを決める代償として、選べなかった無数の選択肢が浮かび上がるだろう。

 「どれも……」という言葉には、まず主体的に物事を決めにくい性格が、次に選択肢を残しておきたい思い(あるいは何かを捨てることはできないという優しさ)が含意されているように初見では感じた。

 とはいえ、後述のように、さくやには一歩を踏み出す力はある。むしろ、判断のタイミングやテンポの合わなさに力点を置いて見た方が良いのだろうか?一般的な話として、注文どうなさいますかと聞かれて、時間かければ決められるけど、後ろに並んでたりしたらそういうわけにもいかないし……。(ペンギンカフェはガラガラだったが。というか、あいねちゃんが声かけるタイミングが早すぎたのでは。) 

 さて、仮に主体的に物事を決めにくいのだとすれば、彼女の「決められなさ」は、『満月の上で逢いましょう』におけるさくやの自己犠牲(私さえいなければ地球と月は争わなくて済む/「好きだからしょうがない」)に帰結するのだろう、という気がした。決めなければいけないくらいなら存在を消す、みたいな。

 後者について、仮に選択肢を捨てることのできない優しさがあるのだとするなら、「お二人と一緒だと、なんだかとっても良い気分」という17話のさくやの最後のセリフからは、あいねとみおのどちらも捨てがたいという、ポリアモリー気質、たらしこみ気質を感じることもできるだろう。飛躍。

 

 結局、ペンギンカフェにてさくやが頼んだのは、あいねに勧められたトマトバジルチーズのスペシャルサンドイッチであった。これもまたひとつの「導かれ」た結果である。

 主体的に物事を決めにくいことは必ずしも悪いことではない。ふんわりとした話になるけれど、「自分はどうしたいか」という決断を促される局面で適切な選択ができる人がどれだけいるのだろうか。占いであろうと何であろうと、「導かれる」ことで運命が動き、局面が切り開かれることもあるだろう。(とはいえ、政策決定の際に占いをされてはたまったものではない、かもしれない。卑弥呼か。)

 あいねが「どのコーデでチャレンジすれば良いか、わかんなくなってきちゃったよ」と迷っているときも、打開のきっかけとなったのはさくやの占いであった。

 そして、さくや「私はお月様の言葉を聞いただけ。運命を導くのはお二人自身です。」というセリフからも、「導かれ」た後にやっていくのは自分しかいないのだということが示唆されている。やっていきましょう。

 オーディションでは、さくやの言った言葉をみおがそのまま返す場面がある。

さくや「お二人に励まされ、無事、通過できました。」
あいね「あたしたちはちょっぴりお手伝いしただけ。」
みお「面接審査はさくやさんが自分で乗り越えたんですよ。」

 ここからは勝手な思い込みなのだけど、アイカツフレンズ!の世界は、おそらくずば抜けた超人のいない、ある意味では地に足のついた「悩み」のある世界なのかな、という気がした*1

 「導かれて」「励まされて」と、「~される」というのは受け身な印象を持ってしまうのだけど、支えてくれる人がいるからやっていけることもある。

 さらに、これまで言ったことをひっくり返すようだけど、さくやが「主体的に物事を決めにくい」という読み込みはあまり強くしない方が良い、とも実は思っている。

 例えば、「明日、日の登る方角にある話題のカフェを訪れれば、最高に素敵な出会いがある。」というさくやのセリフがあるアバン。「ですが、明日だと一人でおでかけしなければ……」と、さくやはためらいを見せる。(オーディション同様、本来なら付き添いがいるのだろうか。)

 ここで占いの結果を信じ、「一人でおでかけ」したのは他ならぬさくや自身である。必ずしも主体性が無いわけではない。付け加えて言えば、「占いをする」という行為に主体性が無いと言えるだろうか?ということを無限に考えていくと、「主体性」とは、「意志」とは、「選択」とは、という、果ての無い問いに突入してしまいそうになる。ここでは、便宜的「主体性」や「意志」を伴った選択の水準を分けて見ると良いのかもしれない。というか、状況次第で変わってきますよね、という話だけなのかもしれない。

 

  「へっ、月の裏側?」「でも月から来てくれたってことは、さくやさんって宇宙人?」と聞いたときのあいねについて、天然ボケなのかなとまずは思った。さくや(ボケ)とあいね(ボケ)で、みおが大変そう。

 天然ボケ以上に、あいねがさくやを「宇宙人」と規定したセンスに、どことなく身も蓋もない現実主義を感じてしまった。月というある種の「設定」のミステリアスさをすっ飛ばして、そもそも月とは「宇宙」だよね、「ロケット乗るよね」という発想の連鎖には、あまりロマンが感じられなかった。オーディションでも「宇宙遊泳」があるかもしれないということで、この現実主義が結果的に身を助けることとなる。(オーディションに宇宙遊泳があること自体は非・現実的、だけど。)

 そう考えると、みおは植物図鑑を好んで読んだりする(=自然科学に親しむ素養がある)一方で、占い(=非科学的、と言いたいところだけど、少なくとも植物図鑑よりか実証性に欠けるとだけ規定しておく)にも親しむロマンチストな一面がある。(ついでに言えば、ラブミーティアのゴシップも大好き。)このあたりは切り分けができてるだろう、多分。暴走することもあるけれど……。

 他方、あいねは、あまり占いに興味は無く(少なくとも「月の裏側」を知らないということは占いファンではない)、ラブミーティアも最初は知らず、という感じで、要するにフィクションに対する耐性に弱い側面があるのではないか?(いやいや現実も実はフィクションだよみたいな妙ちきりんな話は置いておいて)フィクションと現実のすっぱりとした切断のできてなさが、天然ボケの正体な気がした。

 オーディションの演技審査後、さくやを見たあいねは「ロマンティックなお月さまの物語が思い浮かんでくるみたい」と述べている。こじつけを言うならば、とりあえず現実の「月」と物語の「お月さま」は違うことは理解しているのだろう。

 

 みお「でも、映画の主役の座を射止めるのは、私たちピュアパレットですから。」「さくやさんの占いは絶対に外しません。そのためにも、正々堂々の勝負で、必ずさくやさんに勝ってみせます。ですから、安心してください。」

 以上のみおの発言に対し、あいねは「ん~?」という困ったような表情をする。この時にはあいねはみおの発言に対する違和感を言語化できていない。17話の最後で、あいねはようやくみおに対する違和感を言語化する。

 みお「占いに傷をつけないためにも必ず的中させてみせます。」ここではあいねは「それはみおちゃんのセリフではない」と言う。

 あいねのツッコミは、占いの責任はあくまで占った者が持つものであるという現実主義?を反映したものに見える。(ちょっとここはどういう意味で「みおのセリフでない」と言っているのかイマイチしっくりきてなかったりする。)「占いはあくまで占いであって、その先は自分で乗り越えるもの」という了解が三人の間にありそうなものなのに、「月の裏側」が好きすぎて倒錯した発言をしてしまう。占いの結果に対して「導かれ」た者が責任を持つ必要は無いだろう。

 そうすると、先にあいねにはフィクションの耐性が少ない(触れなさすぎ)が故に天然ボケに至ると無茶苦茶なことを言ったのだが、みおは逆にフィクションに触れすぎていることで暴走しボケてしまうということになるだろうか。

 あと、この場面はフレンズの関係性が少しずつ深まっている場面であるようにも思う。時間はかかっても、違和感はしっかり突っ込んで伝えていく、なだめていくという一連のやりとりができつつあると言えるだろうか。

 

その他

:次回予告のハニーキャット同棲予告やばすぎひん?
:占いで「話題のカフェ」ってどう導きだすの。
:「明日だと一人でおでかけしなければ」微妙に五七五に被せてきた。
:やっぱりチンチロリンがうまそう。白百合さくや博打合同。
:「月の裏側」の管理人。ネットビジネスがうまそう。アフィリエイトで儲けてそう。
:さくやの月に関する練習……どういう経緯ですることになったのか。
:みおちゃんそんなに月の裏側であいねとフレンズを……ってペラペラ言っていいのか。
:みお王子、よかったね……でも本当はみお王子とあいね姫がよかったんでしょ……(ギギギ)。
:月と言えば『かぐや姫の物語』。また見返したい。
:占いの結果のページを間違えていたというのは若干ズコ----となった。
:1話の中でパジャマ、私服、制服、水着、ドレスなどのおひろめやばすぎひん?

 

*1:(追記)いやまあ、みんなほぼトップアイドルなことはそうなんですが、それを忘れてしまいそうになるくらい感情移入してしまいそうになる。